~第一節 作戦~ |
イーゼルN |
私たちは、白き闇との戦闘に敗れ、心身共に疲れ果て、眠りにつくのでした。
白き闇とは、ラグーン島が神と崇めていた物の正体です。
彼は、生贄をアンデットにし、帰らずの森に束縛しています。
もう、冒険を始めてから5日目です。あと、帰りの時間を含めて猶予は4日しかありません。
さぁ、ルイ、リュードさん。正念場ですよ。
最初にルイが起きました。 |
ルイ |
リュード、イーゼルどこにいる! |
リュード |
あ、リュード起きていたのか。ふぅ、体と心が楽になってる。サラの実のおかげか? |
ルイ |
リュード、そこにいるのか? 暗くて何も見えない |
イーゼル |
ん・・・ ルイ、おはようございます。真っ暗ですね。今明かりを付けます。 「光につどいし精霊よ、我らを照らす明かりを灯し給え スワイプ・ライト」 |
ルイ |
イーゼル、精神力は元に戻ったか? |
イーゼル |
完全とまでは行きませんが、かなり回復しました。大神官マーサ様のおかげです。 |
リュード |
さて、これからどうするかだな。ルイ、策はあるのか? |
ルイ |
正直な所無い。イーゼル、白き闇とは一体何者だ? |
イーゼル |
私にも判りません。でも、精霊魔法に近い術を使う所を見ると、
闇と契約しているシャーマン、もしくはその亜種なのかもしれません。 |
ルイ |
どうすれば倒せる? 白き闇は実体が無かった。剣では倒せそうに無いが。 |
イーゼル |
判りません。通常であれば、シャーマンは実体を持ちます。
先日のドラゴンとの戦い、あそこにヒントは無いのでしょうか?
ドラゴンは、無意味に私たちを試したりはしません。 |
ルイ |
そうだな。この前戦ったデビル系のモンスターも闇と契約しているんだよな。 |
イーゼル |
はい。 |
ルイ |
イーゼル、俺たちの武器に光の加護をくれないか? |
イーゼル |
判りました。ルイ、リュードさん、貴方たちの武器全てを貸してください。
光の加護を与えます。 |
ルイ |
あぁ。 |
リュード |
ほれ、イーゼル、武器だ。しかし、奴は闇と契約してるのに何故白ずくめなんだ? |
イーゼル |
それも判りません。では、武器に光の加護を与えます。
「光につどいし精霊よ、我の友に力を、イクリプス・エナジー!」 |
ルイ |
結局の所、出たとこ勝負か。 |
イーゼルM |
急がなくてはなりません。サラの実は長くても3時間しかその効果を発揮しません。
でも、この事はルイに伝えない方が・・・焦ったら負けてしまうかもしれません。 |
リュード |
イーゼル、何故 深刻そうな顔をしてるんだ? |
イーゼル |
何でもありません。急ぎましょう。幸い今は夜です。また、光を探します。 |
ルイ |
そうだな。今はイーゼルだけが頼りだ。 |
リュード |
まぁ、なんとかなりますぜ。神様は正義の味方でさぁ。 |
イーゼル |
リュードさんらしいですね。 |
ルイN |
3人は再び装備を整え、馬に跨がる。 |
イーゼル |
たぶん、あちらの方向です。 |
ルイ |
判るのか? |
イーゼル |
何となくですが、判ります。闇の気配を感じるのです。 |
~第二節 白き闇 再び~ |
リュードN |
俺たちはイーゼルを先頭に馬を駆った。イーゼルも迷っているんだろう。
その道のりは、真っ直ぐでは無く、彷徨っている感じさえする。 |
ルイ |
イーゼル、大丈夫か? |
イーゼル |
えぇ。闇の気配が動いている様に感じられます。 |
リュード |
ちょっと止まってくれ。 |
ルイ |
リュードどうかしたか? |
リュード |
なんか、変なんだ。ルイ、イーゼル、何か感じないか? |
ルイ |
あぁ、確かに、何かは感じている。でも、それがなんだかは判らない。 |
イーゼルM |
そう言われて、我に返りました。時間が無い事ばかり考えていて、
焦っていたのです。私は心を研ぎ澄ましました。 |
ルイ |
イーゼル、これは白き闇の魔法のせいか? |
イーゼル |
・・・ |
ルイ |
イーゼル? |
イーゼル |
白き闇の居場所がわかりました。
ルイとリュードさんが感じている何かは闇そのものです。
サラの実を食べた事で、魔道に関する感覚が鋭敏になったのだと思います。 |
ルイ |
イーゼル、ならお前が一番 闇を感じられるんじゃないか? |
イーゼル |
えぇ、少し焦っていたので、心をかき乱されてしまいました。 |
ルイ |
何に対して焦ってる。 |
イーゼル |
今は答える時ではありません。さぁ、こちらです。行きますよ。 |
リュード |
ルイ、俺たちが考えても仕方ありませんぜ。イーゼルに任せておきましょうや。 |
ルイN |
今度はイーゼルは真っ直ぐに馬を駆った。そして5分くらいの時間が経った。 |
イーゼル |
見えました。光です。え? こっちに向かってきてる? |
リュード |
そいつぁ、好都合ですなぁ。 |
イーゼル |
来ます! |
白き闇 |
ほう、我の魔法を受けて動けるのか。見上げたものよ。
しかし、何度 我と対峙した所で結果は同じ。
汝らは、結局 全員アンデットに成り果てる身、勝算は無い。 |
リュード |
やって見なきゃぁ判らんね。さて、どうするよ隊長さん。 |
ルイ |
イーゼル、光の結界を張れ。すぐにだ。 |
イーゼル |
「光につどいし精霊よ、我らの前にて盾となれ、シャイニング・ミラー・レイ!」 |
白き闇 |
ほぅ。光の結界か。儂を逃さぬつもりか?
笑わせてくれる。ならば、汝らに再度地獄の苦しみを与えるまでよ。 |
リュード |
俺から行くぜ! うりゃぁ~ |
白き闇 |
学ばぬか。我に剣は通用せぬ。 |
リュード |
ありゃ、全然手応えがねぇ。空気を切り裂いているみてーだ。 |
白き闇 |
なるほど、剣に光の加護を与えたか。しかし、詰めが甘い。
「闇に巣くう亡者よ、汝の魂を今、彼と共に ラクア・デル・フィア」 |
ルイ |
リュード! |
白き闇 |
さて、次はどう来るのだ。 |
ルイM |
作戦をきちんと練っておくべきだったか。
リュードは戦闘不能。どうすれば、どうすれば・・・ |
ルイ |
はっ、誰だ! |
イーゼルM |
ルイ、貴方の心だけに思念波を送っています。これから言う事をよく聞いてください。 |
ルイM |
イーゼルなのか。どうすればいい。 |
~第三節 決着~ |
イーゼルM |
目を閉じて心を集中してください。目に見えている白き闇は幻影です。
サラの実を食べた貴方になら、本当の白き闇を感じ取る事が出来るはずです。
本当の白き闇は、闇そのものです。闇を感じ取るのです。 |
ルイM |
あぁ、やってみる。あ、闇を感じる。巨大な闇を。あれが奴の本当の姿なのか? |
白き闇 |
汝ら、諦めたか。ならば儂は去る。光の結界を解け。 |
ルイ |
そこだぁ~ |
白き闇 |
何! 見えているのか?
しかし、それも遅かりし。今一度、汝に絶望を与えん!
「闇に巣くう亡者よ、汝の魂を今、彼と共に ラクア 何 ぐはぁ! |
ルイN |
生死を分ける出来事だった。目を瞑ったまま闇の本体へと駆ける。
途中何度も躓きそうになる。魔法の詠唱が聞こえる。間に合わない。そう思った。
その時、体が勝手に反応した。剣を捨て、腰の短剣を闇の中心に向かって投げていた。 |
白き闇 |
ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。 |
ルイN |
目を開ける。そこには、巨大な目が存在していた。目の瞳の部分に短剣が刺さっている。
短剣の部分を中心にして、目が崩れ去る。心の中に白き闇の断末魔が響いていた。 |
イーゼル |
ルイ! |
ルイ |
イーゼル、やったのか? |
イーゼル |
はい。闇が縮小していきます。じきに消えるでしょう。
貴方って人は、貴方って人は・・・ |
ルイ |
おい、イーゼル、何を泣いている。 |
イーゼル |
ルイの攻撃は間に合わないと覚悟しましたから。もう終わりだと。 |
ルイ |
俺も、まさか自分で短剣を投げるなんて思ってもみなかった。
全ての武器に光の加護を与えておいて正解だったな。
これで、終わるのか? |
イーゼル |
はい。術者が消えれば、今掛けられている魔法は全て無効になります。 |
ルイ |
そういえば、体が軽い。それに心の中にあった悲鳴が消えている。
はっ、そういえばリュードは? |
リュード |
あいたたたたた。 |
ルイ |
リュード! |
リュード |
あれ? 体が軽い。心も痛くない。ルイ、どうなってる。 |
ルイ |
白き闇を倒せた。イーゼルのおかげだ。 |
リュード |
そうですかい。イーゼル。有り難うな。 |
イーゼル |
ルイのおかげです。私は何も・・・ |
リュード |
おいおい、どっちがやっつけたんだ? |
ルイ |
まぁ、いいじゃないか。 |
リュード |
そうですな。まぁ、俺は何もしてませんが。 |
イーゼル |
あと1時間位です。 |
ルイ |
何がだ? |
イーゼル |
実は、サラの実の効果はあと1時間も持ちません。 |
ルイ |
何だって! 何故それを先に言わない。 |
イーゼル |
焦ったら負けると思いましたので・・・ |
リュード |
結果オーライじゃないのか。 |
イーゼル |
ごめんなさい。 |
ルイ |
いや、確かにイーゼルの言う通りかもしれないな。謝らないでくれ。 |
イーゼル |
有り難うございます。
今日はここで寝ましょう。サラの実の効果が切れたら、私たち起きていられないと思います。 |
ルイ |
仕方が無いな。まぁ、此処は獣も魔物も居ないのは判っているし、休むか。 |
リュード |
こんなに元気なのにですかい? |
イーゼル |
えぇ、ここしばらくまともに食事も摂っていませんし、全員 疲労の極みにいるはずです。 |
ルイ |
リュード、寝るぞ。 |
リュード |
へいへい。 |
イーゼルN |
サラの実の効果が現れているときは私たちは 寝られませんでした。
しかし、徐々にサラの実の効果が消えてくると、睡魔に引きずり込まれていくのでした。 |
~第四節 過ぎ去りし 悪夢~ |
リュード |
うはー、よく寝た。しっかし、腹減ったなぁ。おい、ルイ、イーゼル、起きろ。 |
ルイ |
あぁ、リュードおはよう。 |
イーゼル |
あ、リュードさん おはようございます。 |
リュード |
え! おい、これはどういうことだ。 |
ルイ |
白骨だらけだな・・・ |
イーゼル |
アンデッドの魂が浄化されたのでしょう。肉体が風化してしまったのです。 |
ルイ |
みんな天国に行けたかな。 |
イーゼル |
えぇ、苦しみの無い世界に行けたと思います。
ルイにリュードさんもアンデッドの苦しみを少し味わったでしょう。
生贄だった彼女たちはその何倍もの苦しみを与えられ続けてきたんです。 |
リュード |
ぞっとするね。 |
ルイ |
一段落したら、此処の森にある骨を王国の騎士団で丁重に葬らなければ行けないな。 |
イーゼル |
えぇ、大聖堂もお手伝いできると思います。 |
~第五節 帰還 新たなる試練~ |
リュード |
まぁ、それはいいが、腹減ったぞ。 |
イーゼル |
そうですね。 調理器具はありませんから、パンでも食べましょう。 |
リュード |
出来るなら 肉を腹一杯食いたい気分だ。 |
ルイ |
王国に帰ってからな。 |
イーゼルN |
こうして私たちは王国に向け出発するのでした。 |
リュード |
しかし、迷いの森から、どうやって出る? |
イーゼル |
もう、この森に闇の結界はありません。出る事は可能です。
ただ、かなり広い森なので何処に向かえばいいのかはまた別問題です。 |
リュード |
うはー、迷子か。 |
イーゼル |
そんな事はありません。ちゃんと出られますよ。 |
ルイ |
どうやって? |
イーゼル |
リュードさん、私がこの森に入ってから何回か呟いていたのは思えてますか? |
リュード |
あぁ、そういえば、気にするなって言ってたな。 |
イーゼル |
あれ、実は簡単な魔法を唱えていたんです。 |
ルイ |
というと? |
イーゼル |
道しるべの魔法です。それをたどっていけば、元に戻れます。 |
リュード |
ふぅ。じゃぁ、先頭はイーゼルだな。 |
イーゼル |
えぇ。行きましょう。もう、そんなに日が残っていません。
早く 王国に戻らないと大変な事になりかねません。 |
ルイ |
イーゼル、頼んだ。 |
イーゼル |
はい♪ |
ルイN |
そうして、俺たちは3日を掛け王国にたどり着いた。
しかし、王国で待ち受けていたのは、新たな試練だった。 |
リュード |
どういうことだ、何故俺たちが、牢に入らなければいけない。 |
ルイ |
まぁ、仕方が無い。百年以上 神がいると信じられていたんだ。
俺たちの話を、国王に信じろと言う方が無理がある。 |
リュード |
でも、このままじゃ、俺たちは・・・ |
ルイ |
心配はいらないさ。時期に嫌疑は晴れる。 |
イーゼル |
ルイ、それにリュードさん。 |
リュード |
イーゼルじゃないか。どうして此処にいるんだ。 |
イーゼル |
国王が面会を許可してくれました。そして、明日、私は生贄の祭壇へ向かいます。
ただし。 |
ルイ |
ただし? |
イーゼル |
私が、生贄の祭壇に着いてからの一週間分の食料を置いていってくれるそうです。 |
リュード |
というと? |
イーゼル |
国王は、満月の日から一週間後に、私を迎えに来ると約束してくれました。
もし、私が無事なら、私たちの言葉を信じると。 |
リュード |
しかし、獣や魔物達が襲ってきたら・・・ |
イーゼル |
なので、ここに来たのですよ。ルイ、貴方の同伴が認められました。 |
リュード |
なるほど・・・ 新婚旅行って訳ですか。ならば、安心ですな。 |
ルイ |
おいおい、新婚旅行は無いだろう。 |
リュード |
いや、そうでも無いみたいだな。イーゼル、顔真っ赤だぜ。 |
イーゼル |
リュードさん・・・ |
ルイ |
リュード、あまりイーゼルを困らせるな。 |
リュード |
へいへい。 |
イーゼル |
明日の明朝、ルイは牢から出られます。リュードさん、少し待っててくださいね。 |
リュード |
少し寂しくなるが、まぁ、それも一週間とちょっとだ。我慢するよ。 |
イーゼル |
それと・・・ |
ルイ |
まだ他にあるのか? |
イーゼル |
私たちが戻ってきたら、ルイとリュードさんは騎士団へ、私は神官の職へ戻れます。 |
ルイ |
それは有り難い。 |
リュード |
まぁ、当然だけどな。 |
イーゼルN |
そして、ルイと私は生贄の祭壇に馬車で揺られて行きました。
祭壇での一週間のルイとの生活は秘密です。
その後、当然のことながら 私たちは 王国に戻ってくる事になりました。 |
~第六節 戻りし平和そして~ |
ルイ |
ただいま、リュード |
イーゼル |
今、戻りました。リュードさん |
リュード |
おう、お帰り。牢獄ってのは退屈だ、真剣に死ぬかと思ったぜ。
冒険していた方がよっぽどましだ。 |
イーゼル |
リュードさんらしいですね。 |
ルイ |
そうだ、リュード喜べ、国王が俺たちに褒美をくださった。何だと思う? |
リュード |
そうさなぁ。金貨ですかい? |
イーゼル |
リュードさん、そんな俗物的なものでは無いですよ。 |
リュード |
じゃぁ、なんだ。 |
ルイ |
ライラ山だ。 |
リュード |
ライラ山?聞いた事ないな。 |
イーゼル |
私たちの名前の頭文字をつなげたR、I、Rを取ってライラ。
これを神々の山の新しい名前にする事になったんです。
ラグーン島の全国に告知されます。 |
リュード |
うーん、俺は物の方が良かったな。 |
ルイ |
物は無くなるが、山の名前はそうは変わらない。後生まで伝えられるだろうさ。 |
イーゼル |
あと、帰らずの森も、近く名前が変えられるようです。
そして、森の中に街道を整備する事になるようです。ラグーン島では貴重な緑ですから。 |
ルイ |
帰らずの森の遺骨の収集の指揮、街道の整備の指揮は俺が行う事になる。
補佐はイーゼルとリュードだ。 |
リュード |
へぇ、そうですかい。 |
ルイ |
不満そうだな。 |
リュード |
いや、そんな事はないですが、お二人の邪魔にならないかとね。 |
イーゼル |
リュードさん、私たちは仲間です。 |
リュード |
まぁ、そうですな。また三人で冒険したいですなぁ。 |
ルイ |
そう遠くない将来、出来るんじゃ無いか? |
イーゼル |
そうですね。あのドラゴンに会いに行きたいですね。
まだ、ラグーン島の秘密を知ってそうです。 |
~エンディング~ |
イーゼル |
お話はこれで終わりです。 |
リュード |
俺たちの出番は終わりか~。続編無いのか? |
ルイ |
作者次第じゃない? |
イーゼル |
でも、リュードはお父さんは本編に出てきますね。 |
リュード |
そっかぁ。リュードは本編でも出てくる可能性あるのか・・・ |
白き闇 |
我は本編でも出番がありそうだ。 |
リュード |
うわ、お前、死んだんじゃ無かったのか? |
白き闇 |
まぁ、エンディング位いいではないか。我の出番、少ないしな。 |
イーゼル |
では、皆様、良かったら本編もお楽しみくださいね♪ |
リュード |
では、みなさま アディオス アミーゴ |
ルイ |
なんか、違う気がする・・・ |
リュード |
弾けたい、お年頃なんでい。 |
イーゼル |
では、皆さん、お元気で! |
ルイ |
もう、なんでもいいや。 |
本編もよろしく! |